少子化問題について

先進国の悩みと対策

ここまででも、日本にとっての深刻な問題である、と繰り返し紹介してきた「少子化問題」、より正確には「少子高齢化問題」について、ここではより具体的に紹介します。
まずは、日本における少子化の現状というのがどのようになっているのか、ということについて簡単に見て行きましょう。
2005年に発表された出生率は、1.26という数値です。
その後多少回復し、2014年には1.41まで回復しましたが、まだまだこの数値というのは大きな問題があります。

というのも、人口をそのままの水準で保つためには、2.08という出生率が必要であるためです。
日本の人口は、このまま行くと減少に転じていくことになることが、ほぼ確定的になった、といえるでしょう。
実際このままの推移でいくと、2050年前後には1億人を割ると考えられており、労働力の低下による経済力の衰退についても避けては通ることが出来ない状況が近づいている、というのが日本の現状です。

では、他の国における出生率というのはどのような状況となっているのでしょうか?
日本の1.41という数字は、世界的に見ても下から10番目に入る水準です。
同じ水準の国として、ドイツやオーストリア、イタリアなどがあります。
また、日本よりも低い国としては、1.3のポルトガルやシンガポール、1.1のボスニア・ヘルツェゴビナなどがあがります。

しかし、実は世界的に見た時の出生率の平均値というのは2.4であるため、世界としての人口はまだまだ増加の傾向にあることがわかります。
主に出生率が高いのはアフリカや中東地域で、一位のニジェールは7.0、2位のソマリアは6.3、アフガニスタンは6.2といったような水準となっています。
ただ、先進諸国と途上国とでは状況が大きく違っているため、同じく先進国についても見て行きましょう。

先進国のなかでは出生率が高いのが、2.0を維持しているフランスです。
これでもすでに人口維持ラインである2.08を割っていることを考えると、先進国は共通して人口減少について頭を悩ませなければならない状況にある、ということになります。
フランスは一時期より厳しい状況にありましたが、「家族手当」をはじめとした少子化対策政策の成功によって、かなり状況を巻き返した、と言われています。

このように、お金による対策が多いものの、基本的に「子供を育てる程有利になる」仕組みが組まれていることが1つ目のポイントです。
そしてもう一つは、女性が仕事をしながら子育てをしやすい環境を整えている、ということにあります。

職業自由選択補足手当や、保育方法自由選択補足手当などを採用しており、これによって仕事と子育ての両立が図られています。
また、男性側の出産休暇も盛んに利用されており、子育てを女性だけの仕事として押し付けるのではなく、互いに協力して行っていく、ということが1つの題目となっていることが伺えます。

日本の少子化の原因は

では、実際の所日本における少子化問題の原因というのはどのような部分にあるのでしょうか?
一般に言われる原因の1つとして「女性の社会進出」というのがあります。
しかし、これについては多少言葉が足りていないと言えるでしょう。
日本の労働力のことを考えると、女性の役割を家事に限定するのではなく、社会で活躍してもらう、ということは非常に重要なことです。

ただ、その反面で仕事をしながら子育てをする環境が全く整っていない、というのが非常に大きな問題でしょう。
出産をするならば仕事を辞めなければならない、という価値観がまだ残っているために、今の仕事を続けるために出産を遅らせてしまい、結果として年齢の問題によって出産ができなくなってしまう女性が多くなってきている、ということについて考えなければなりません。
日本の職場における大きな問題は「あくまでも男社会のなかの女性」という構図というのが拭いきれていないことです。

それによって、あたかも出産をする女性を「自分で男社会に入ってきて規律を乱すイヤな存在」と見てしまう人がまだまだ少なくありません。
このような環境では、女性は落ち着いて結婚や出産を進めることができなくなってしまうでしょう。
まずはこの状況を変化させていく必要があると言えます。

そして、都会進出が進んでいることによって、核家族化が進んでいることも1つの原因です。
かつては祖父祖母世帯と同居する、ということが当たり前に行なわれており、それこそ仕事が忙しい家庭であっても子育てをある程度サポートしてもらうことが可能でした。
しかし、だんだんとこういった家庭が少なくなってきており、待機児童の問題も相まって預けることが無いという理由から子供の数を減らさざるをえない、という家庭も多く見られます。

そして何よりも大きな問題となっているのが「価値観の変化」でしょう。
かつては「結婚をして子供を育てる」というのが当たり前の価値観であり、そうしない人というのは社会規範から外れているとすら考えられている向きがありました。
これが正しい価値観であるのか、ということについては一旦置いておくとしても、これが変わったことによって出生率に影響が出ていることもまた事実です。
結婚や出産というのが、人生において必ずしも必要なプロセスではないのではないか?と考える人の増加が、少子化に拍車をかけていると言って良いでしょう。

こういった価値観が広がる背景として、結婚自体に求めることが変わっていることも挙げられます。
かつては結婚というのは、それこそ分業のために必要なことでした。
今よりも大変だった家事を担ってもらうために妻という役割が必要であり、同時にその経済的な支えとなるために夫が必要であった、ということです。
前者は家具家電の発達により、後者は女性でも働きやすい環境の形成により、メリットが薄れてしまい、結婚に対する価値観自体が変異していると考えられるでしょう。